経営改善事例

専門家派遣事業を活用した経営改善支援

経営改善支援に至るまでの経緯

 県内外の建設業者を取引先とするクレーン工事業者です。大手ゼネコンを取引先として、業容を拡大しており、堅調に業績を上げてきました。しかし、業の要であるクレーン設備を導入する度に、多額の借入が発生しており、建設受注の波により、売上が落ち込んだ際には、キャッシュフローを上回る返済負担となり、資金繰りを圧迫していました。
 安定的な返済のため、管理改善及び収益性向上策等について専門家からアドバイスを受けたいとの要望があり、当協会の「専門家派遣事業」の申込を受けました。

経営改善支援の内容

 申込を受け、当協会の専門家派遣事業に登録している専門家の中から、建設業を専門分野とする中小企業診断士を派遣し、企業へのヒアリングを通して、経営状況の把握と経営課題の洗い出しが行われました。経営課題として、建設需要の低迷期における営業活動の不足、収益に対して借入金返済が過大となっていることなどがあげられました。また、計数観念に乏しく、感覚的な経営が続けられていたため、利益を出しているにも関わらず、資金繰りが多忙な状況が理解できていないといった課題も表面化しました。課題解決に向けた専門的なアドバイスを受けながら、5回の派遣を経て、経営改善計画(以下、「計画」という)が策定されました。計画は受注低迷期における営業強化による年間を通じての機械稼働率および人的稼働率の向上、工事日程管理・稼働率管理の強化により売上・利益を増加させる内容となりました。その後、当協会が事務局となり関係支援機関を一堂に会した経営サポート会議を開催し、企業から計画の説明ならびに計画に基づいた金融支援の依頼がなされました。会議での意見交換を経て、計画の合意形成が図られ、各金融機関で計画に基づいた金融支援が行われました。当協会では、事業再生計画実施関連保証(経営改善サポート保証)(保証制度の内容はコチラ)を活用して、新規保証を対応し、手元資金を確保するとともに、既存の債務の借換により、返済負担の軽減を図りました。

経営改善支援の効果

 専門家のアドバイスを受け、実行性の高い計画が策定されました。また、計画策定後の専門家によるモニタリングも実施され、経営管理・事業管理のPDCAサイクルが確立され、計画のフォローアップが強化されました。これにより、計画に基づく取り組みを着実に実行することができ、設備や人員の稼働率管理が徹底され、収益の改善が図られました。計画最終期には、売上・利益ともに計画値を上回る実績となりました。
 また、事業上継続的な設備投資が必要となりますが、計画に基づいた金融支援を行ったことにより、長期の資金繰りが安定し、今後の設備導入時のキャッシュアウトの発生に備えることができました。
 企業からは、今後も設備の稼働率向上を意識し、収益を増強させて安定した経営を展開していきたいとの話がありました。