事業承継支援

「目指す姿」の共有により、動き始めた事業承継!

先送りにされた事業承継

 昭和初頭に先代が個人創業、昭和後期には有限会社として法人成りを行う。創業以来、金属加工業者として事業を営み、現在は自動車部品の金属加工をメインとしている法人です。
 売上の70%がメイン取引先1社に集中していました。メイン取引先の業況低迷の影響に伴い、売上が大幅に減少することになります。売上の減少により、資金繰りに窮することとなったため、当協会では元金据置きの返済緩和支援を開始しました。2年後には、受注が回復したことにより、業況も改善の兆しが見られ、金融支援を継続する中、借入の元金返済を再開していました。
 事業は、代表者(70代)と代表者の妻、代表者の子息4名のほか、パート従業員3名の計9名で行っていました。代表者が高齢であったものの、「借入金を圧縮してから事業承継を行いたい」との思いから、事業承継には取り掛かれておりませんでした。
 事業改善の兆しが見え初めたことから、事業承継を念頭に置いた事業計画策定を行いたい旨の相談が当協会にありました。当協会では、事業者の希望に答えるべく、「信用保証協会専門家派遣サポート事業」を活用し、当協会と提携している一般社団法人山梨県中小企業診断士協会に所属する中小企業診断士の派遣を決定。事業承継に向けた経営支援を開始しました。

事業承継に向けた現況の把握

 事業承継は「現経営者から後継者へ事業のバトンタッチ」を行い、企業がこれまで培ってきた様々な財産(人・モノ・金・知的資産)を上手に引き継ぐことが重要となります。まずは現況を把握することから始めました。

不足していた後継者等との対話

子息4名全員が事業に携わっている。

  ・長男 技術担当・後継予定者   ・次男 製造担当
  ・三男 新規営業担当       ・四男 既存主要取引先担当

 既にそれぞれの役割分担に基づき、日常の業務を担っており、業務面についての引継ぎは十分行われていることが確認できました。ただ、子息4名とヒアリングを進めていく中で、現社長と子息4名との間で、今後の事業についての話し合いを持つ機会がこれまではなく、現代表が今後の経営をどのように行っていきたいのか、会社の目指すべき方向性などの思いやビジョンの共有が図られていないことが判明しました。また、兄弟間でも経営に対する意見の食い違いも見られました。

会社資産と個人資産の混在

 現在の株主や事業用不動産の所有者などの確認を行いました。事業活動に必要な資産の中で、工場の土地・建物が会社資産になっておらず、土地は代表者の父(創業者・故人)、工場建屋は代表者の個人所有となっていました。

返済緩和債務の存在への不安

 短期借入金が、金融機関からの18Mに加え、親族から7Mありました。また、15年ほど前の設備資金を含めた長期借入金52Mの負債も残っており、返済緩和支援中となっています。

後継者と共有された会社の未来

 代表者は「会社の状況を少しでも良くしてから引き継がせたい。会社の経営状況を含め全てを話してしまうのは性急過ぎるのではないか。」との思いがあり、話し合いに積極的になれないでいました。

そこで、当協会から

  1. 事業承継は時間を要すものであり、早目の対応が必要であること
  2. 事業承継後の経営について、後継者にじっくり考える時間が必要であること
  3. 後継者による新たな取組みが経営改善に大きな成果が現れること

などを丁寧に説明し、事業承継に関する話し合いを持っていただきました。

 これにより、代表者と子息双方の事業承継に向けての意識を高め、計画的な取り組みを促すことに成功しました。代表者と子息全員で数年後の「目指す姿」の共有が図られることになりました。
 また、山梨県事業引継ぎ支援センターに当社株価のシミュレートを依頼し、後継者へ計画的な株式譲渡への支援を行いました。今後の資産譲渡の実務については、顧問税理士と相談の上で、最も合理的な方法と手順で進めるようアドバイスを行いました。
 事業承継支援と併せて、事業改善計画の策定支援にも着手しました。SWOT分析などを行う中、年間売上目標を設定。メイン取引先はしっかりと堅持した上で、新規顧客の開拓が必須となることを確認しました。後継予定者とされている長男を中心に子息4名での検討を行い、今後3年間の「経営改善計画」を作成することができました。
 売上拡大に向けての具体的なアクションプランや、得意先別の営業活動、売上見通しを基礎とした損益計算計画についても作成し、計画の遂行に向けて、代表と子息全員で一致団結した取り組みが行われました。

事業承継に向けた後継者と一致団結した計画的取組み

 後継予定者を中心として、経営改善計画に基づいた取組みが実施されました。計画2年目には、売上目標を大幅に上回る結果となる等、業績は順調に推移。新規取引先獲得には苦戦しているものの、販路拡大のためのビジネスマッチングへの参加等、継続した活動を行っています。
 また、返済緩和を行っていた保証付債務についても、当協会の「事業承継保証制度B」を活用して借換を実施。金融の正常化も図られました。
 事業資産についても、顧問税理士と協議の上で、効果的な方法で計画的な資産譲渡がなされているところであり、5年をかけて、事業承継が完了する見込です。
 専門家との連携を密に行い、事業引継ぎ支援センターへも橋渡しをするなど、当社の事業承継を様々な角度から支援するよう努め、事業承継への道筋を作ることができました。

ご利用事業者の方の感想

売上改善に向けた具体的な事業方針が立てられず、また事業承継についても悩むばかりで時間だけが経過していました。今回、専門化派遣を通した計画策定により目標が明確になり、事業運営方針を立てることができました。また、自社の強みが技術力にあることを再認識することができ、今後も丁寧な仕事を行っていくよう意識づけられました。さらに、事業承継について後継者と話し合うことができ、後継者の中でも今後は自分が当社を経営していくという意識が高まり、事業承継に向けて動き始めることができました。