中期事業計画

第6次中期事業計画
(令和3年度~令和5年度)

(1)業務環境

 わが国の経済は、新型コロナウイルス感染症(以下「感染症」という。)の影響により、社会経済活動の急激な収縮を受け、全産業において内外需が悪化し未曾有の経済停滞にさらされた。一時は経済活動が徐々に再開され、製造業を中心に内外需が回復し、輸出や生産に持ち直しが見られたものの、外出自粛要請の影響を大きく受けた非製造業、特に飲食業、観光関連サービス業の回復は遅れており、業種による格差が発生している。
 山梨県内の景気においても、感染症の影響により経済活動が停滞し、急激な景気の落ち込みを受けた。また、緊急事態宣言による外出自粛の動きが強まる中、不要不急の消費が低下し、外食産業やレジャー関連産業に深刻な打撃を与えた。
 企業の設備投資も、景気の先行き不透明感から新規投資の慎重姿勢が強まるなど生産活動が大きく停滞し、特に宝飾、ワイン、織物などの本県の地場産業は、催事、展示会の中止を受け厳しい状況に陥った。また、観光関連においてもインバウンド客や国内観光客の激減により厳しい環境であった。
 こうした中、政府や自治体の支援や経済活動の再開により、自動車関連産業に持ち直しの兆しが見られ、在宅やリモートワーク需要の増加により食料品製造や小売業の復調が見られた。更には、デジタル化を背景とした半導体装置産業など一部の製造業において回復基調となった。しかし、感染症の再拡大により再び需要が減退し、サービス業を中心とした宿泊、飲食、観光や娯楽関連の業種は危機的な状況となっており、業種間の景気格差が拡大している。
 景気の先行きについては、中長期的には有効なワクチン接種の広がりによる感染症リスクの軽減、次世代通信規格「5G」の本格普及、医療・健康産業の変革やデジタル化関連の進展に伴う設備投資需要など、経済へのプラス要因はあるものの、宿泊、飲食などのサービス業、それらに関連する業種においては、大きく落ち込んだ状態が続いており、回復には時間がかかるものと見られ、業種間の二極化を伴いながら引き続き緩やかな回復に向うものと考える。但し、感染症の拡大状況によっては、経済全体が再び悪化に向かう可能性もあるなど、先行きへの不確実性が強まっており、今後も動向に注視が必要である。

(2)業務運営方針

 感染症の影響を大きく受けた宿泊、飲食、観光関連などのサービス業をはじめとする中小企業者に対し、本業が回復するまでの時間的猶予とその間の柔軟な資金繰り支援や新たなビジネスモデルへの転換、デジタル化などへのサポートを行っていくことが課題と考えている。現状では感染症の収束が見通せない中、その都度状況に応じて変更・修正を加えながら施策に反映していき、これまで以上に金融機関、地公体並びに関係機関と連携し、より効果的な支援に努めていくことが重要である。
 以上のとおり、当面の3ヵ年においては、感染症の影響を受けた中小企業者や地域経済を早期に回復するための企業支援を当協会の最重要課題として取り組むこととする。
 また、従前からの取り組みにおいても、コロナ過を契機に事業承継や事業再生、生活再生に向けた支援の必要性の高まりに応えていくことや地方創生に向けた支援にも努めていく。
 こうした観点に立ち、将来にわたってサービスを提供し続けていくためには、更なる経営基盤の強化を図ることが重要であり、コンプライアンスの徹底や経営の透明性を確保し、健全な業務運営の継続に努め、様々な経営リスクへの対策を講じるとともに、多様化、高度化するニーズに応えていける人材の育成に取り組む。
 この方針を実施するため、令和3年度から令和5年度までの3ヵ年間の中期事業計画における主要な課題を以下のとおりとする。

1)新型コロナウイルス感染症の影響を受けた中小企業・小規模事業者ならびに県内経済の早期回復に向けた取り組み

 感染症の影響を受け、借入が膨らみ過剰債務となった中小企業者に対して、時間的猶予を与え、この間に本業の回復支援を行うとともに、新たな分野やビジネスモデルへの転換などを通じて、財務改善に向けたサポートを実施していく。また、今まで以上に金融機関や地公体、関係機関と連携して、より効果的な経営支援を実施し、中小企業者並びに県内経済の早期回復に向けた取り組みを行っていく。

2)顧客の実情に応じた経営支援と資金繰り支援への取り組み

 中小企業者の様々な課題を把握し、経営改善や事業再生を着実に進めるため、これまで以上に金融機関や関係機関と連携を強化して、中小企業者の立場に立った課題解決のサポートに努める。特に先述した、本業回復に向けた支援とともに、経営者保証に関するガイドラインの活用による事業承継や事業再生支援に注力していく。
 また経営支援を必要とする中小企業者に対しては、経営支援と資金繰り支援の一体的な取り組みを推進する。
 更には、経営支援事例や改善好事例を情報発信するとともに、それらの取り組みを継続的に分析し、より効果的な経営支援に努める。

3)地方創生への貢献や地域経済活性化に向けた取り組み

 地域に根差した公的機関として、地域経済の活力ある発展に寄与するため、創業支援や事業承継等に関わる各種支援を地公体や金融機関並びに関係機関と連携・協力して地方創生に貢献する。

4)効率性を重視した求償権の管理と回収への取り組み

 求償権の求償権の回収を取り巻く環境は、第三者保証人の原則非徴求や経営者保証を不要とする取扱いの普及、また不動産担保に依存しない保証の浸透などにより回収は極めて厳しい状態が続いている。そうした中、求償権債務者の実情に即し、回収の最大化に着実に努めるとともに、サービサーの活用や企業再生、生活再生を考慮した効率的な回収に取り組む。

5)コンプライアンス意識とガバナンス態勢の向上

 信用保証協会の公共的使命と社会的役割を果たすため、役職員のコンプライアンス意識の醸成に向けた、コンプライアンス実践プログラムの着実な実施に努めるとともに、日々の業務運営において適正な運営・管理の実施に向けてガバナンス態勢の充実を図る。
 また、反社会的勢力、不正利用者に対しては、毅然たる態度で望むとともに関係機関との情報共有を図り、その排除に取り組む。

6)経営基盤の更なる強化

 多様化・高度化する様々な経営支援・金融支援を踏まえ、将来にわたって中小企業や県内経済の発展に貢献していくために、経営基盤の更なる強化を図る。そのために、人材の育成に努め、また、組織として情報通信技術の活用による、業務効率を高める取り組みや事務改善を計画的に進める。
 更には、災害等の様々な非常事態に迅速に対応できるよう、関係する規定の必要な見直しや継続的な周知等によりリスク管理の強化を図る。

7)広報活動の充実

 必要不可欠な存在としての信用保証協会であり続けるためには、常に中小企業者に寄り添い、金融機関や関係機関と連携を密にしながら支援をしていかなければならない。中小企業者の皆さまから頼られる存在であるためには、信用保証協会の役割や身近な存在であることを広く理解していただくことが必要であり、そのための広報を積極的に取り組む。

参考資料