経営強化事例

農家と飲食店が抱える課題をビジネスチャンスに

農家が抱える課題と顧客ニーズへの対応

 当初、個人事業主として飲食店をオープン。その後、法人成りし、現在2店舗の経営をしている事業者の経営支援を行いました。

 こちらの事業者は、飲食店を経営する上で、「他店との差別化に向け、希少性の高い食材を仕入れたくても、流通が少なく仕入れが安定しない」など、飲食店における仕入れに課題を感じられていました。また、仕入を行う中でも、「販路としてJA出荷に頼らざるをえないが秀品のみの取扱いであり、ハネ品などの食品ロスが発生してしまう。」「少量で希少な野菜の取引する方法が少ない」など生産者の販路にも課題があることを知りました。
 そこで、飲食店経営の傍ら、多くの飲食店が必要とする希少性の高い食材と、生産者が取引したい食材とを、少量でも取引を可能とするインターネットを利用したマッチングサービスを開始し、飲食店と生産者との食材取引を双方の課題解決に向けた取り組みが行われました。

 農作物取引のマッチングサービスの運営は順調でしたが、生産者が作る野菜の廃棄ロスがまだまだ多い現実から、更に事業を展開していきます。
JAは秀品のみの取扱いであることや、大手流通スーパーと直取引する際には委託販売の形態となるため、売れ残りの回収義務が発生するところが一番の課題であると感じていました。
 そこで、新規事業として、ハネ品を含めた農作物の一括購入を行い、価格やロット、販売体系にマッチする業者に個別に販売を行う事業を開始しました。
取引数量も順調に増え、契約農家も200先を超えてきたこともあり、青果卸売り部門を分離独立させ、集中経営を行っていきたいとの思いから、新会社を設立しました。そして、当協会に事業拡大に向けての事業資金の相談がなされました。

運転資金の保証対応と「ものづくり補助金」活用へのアドバイス

 新会社設立により増加する人件費や仕入費用、青果を販売する際に必要となる野菜のカット機械の購入等、事業拡大に必要となる運転資金や設備資金として保証申込がありました。
 当協会で事業計画を精査したところ、既に仕入先である契約農家は200先以上、販売先も全国規模の大手流通スーパーや地元スーパー等の販売先を確保しており、事業の実現性は高いものと判断できました。
 この事業は、これまでJAもできず、販売店もやりたがらなかったことであり、地方の生産者が抱える課題と現代の顧客ニーズにマッチした事業であることや、地方の生産者の生産性を上げることで生まれる新たな雇用や需要は地方創生につながることにもなると感じられました。
 ただ、新事業においては想定外のリスクもあることや、本事業の内容からすれば「ものづくり補助金」の対象となりうる可能性が高いと考え、設備資金については「ものづくり補助金」の利用を薦めました。
 結果、見事「ものづくり補助金」が採択となり、運転資金のみの対応となりました。ものづくり補助金で賄われない設備資金の残額については金融機関プロパーで対応し、金融機関と強調した支援を行うことができました。

山梨からアジアへ

 本事業の開始後は、それまでの入念な事業計画策定や代表の真摯な活動もあり、順調なスタートとなりました。
 「野菜の全量買取は規格外が売れなかったり、売れ残った野菜を引き取ったりすることがないので、農家にとってメリットが大きい」と生産者からの反響も大きいようです。生産者からの評判を呼び、契約農家は400先を超えられました。また、販売先も全国のスーパーや学校給食関係、飲食店卸売り、加工製造会社などに拡大し、生産者が作った農産品を無駄なく売り切る流通経路も拡大しています。
 代表の構想はまだまだ大きく、今後は小売業の進出や飲食店の仕込み用野菜へも対応できる加工製造工場の開設に始まり、本事業を全国やアジア圏への進出させたい考え。今後も金融機関と情報交換を密に行いながら、代表の構想の実現に向けビジネスチャンスを活かせるようお手伝いをしていきたいと思います。

ご利用事業者の方の感想

新事業へ進出する際には迅速な対応をしていただき有難かった。「ものづくり補助金」の紹介も大変助かりました。